第2章 馬車に揺られて


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 目を閉じて―――――
広がった暗闇。
その奥に、神経を集中する。
まぶたの裏、無限に広がる闇の中、おぼろげな気配を辿る。
少女はじっと闇を探り続けた。無意識のうちに、その右手が耳を覆った金の耳飾りにそえられる。
……ふっ……と、ある方向に、光の残像のごとき気配を感じ取る。それを逃さぬよう神経を集中しながら、そっと目を開け、
―――――少女はキッ、とその方角をにらんだ。

「見つけた……!」

シエリは言い放つと、場の気まずい空気を気にも止めず、店を出て行った。振り返ることすらなく行ってしまった少女。残された面々は、疲れの色を隠しきれずにため息をついた。


事の起こりはセイズに向かう馬車を探している時だった。キルトは何故あの時、強引にでも身勝手な2人を止めなかったのか、自分に腹を立てていた。
 ガタコトと揺れる馬車の中、感じられるのは荒い道の上を行く車輪の音と、同じ姿勢の身体に不快にひびく振動、そして重たい空気だけだった。キルトは耐え切れず、皆には聞こえぬように、大きく吸い込んだ空気で静かにため息をついた。





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第1章 見えない月の導き