『THANKS 8000HITS!!』

のどかな午後。
 空は晴れわたり、小鳥はさえずる。
 穏やかな風が、さわさわと木々をゆらす森の中、


――――――――6人と1匹は道に迷っていた……。


 「だっからルツの言う方角なんか来なきゃ良かったんだよ!
 こいつの方向音痴はしゃれにならねーんだから……」
 ウォンは恨めしそうに後方のルツを見やる。
「おかしいわねぇ。この道のはずなんだけど…」
 地図を逆さに回してルツはまた地図とにらみ合いを始めた。
「今はどこ?」
 横からのぞき込んだラプラは、地図を見るふりをしつつどうにかルツの癇に障らぬよう、
自然に地図を彼女の手から取り上げる方法を考えていた。
横のシエリの様子を見れば、こてりと眠りだすのは時間の問題である。
そうなった場合、このお嬢様を背負う役が自分にまわってくるのは目に見えていた。
「おい道が開けたぞ」
 苛々も限界に達し始めていたキルトが声音に不機嫌をにじませて言う。
「そこには大きな湖があるはずですよ」
 ラギの一言に皆立ち止まり、そののほほんとした笑顔を振り返った。
「なあ、一応聞くけどよ……、まさか今どこ歩いてるかわかってんのか?」
 ウォンの問いにラギは悪びれもせずに答える。
「うん、さっき地図を見せてもらった時にだいたいは把握したから」
「んじゃ、なんで言わなかったんだよ!!??」
「うん、いや、どこに行くんだろうと思って」
 全く変化のない笑顔に、面々は言葉を失う。
 シロが所在無げに、きゅう、と鳴いた。






「だああぁぁ! 魚なんか釣れねえよ! いないんじゃねぇの?!」
「まあまあ、釣りは気楽に待つことが大事だよ」
 10分としないうちに手作りの竿を放り投げたウォンをラプラがなだめる。
その背中ではすうすうと穏やかな寝息をたてて一国の姫が眠っていた。
結局今から戻ったとして、目的地につく前に日が暮れてしまうと判断した6人は、
その湖をその日の野営地とした。
「今日の夕飯にはまだまだ足りないわよ。大物釣りなさい!」
 久々に新鮮な魚料理が食べられる、と俄然はりきりだしたルツが、
ナイフを片手にウォンをせっつく。
少し高くなった丘で密かに昼寝の体制に入っていたキルトは騒々しさに顔をしかめた。
「全く。ついていけない」
 寝返りをうったその鼻先を裸足の足がかすめた。



「こいつだって寝てんじゃねーか! 俺も釣りはやめだ!! 泳ぐぜー!!」
 大きなはしゃぎ声とともに、ウォンは丘を台にして勢いよく湖に飛び込んだ。





 いや、飛び込むはずだった―――――――――






2006/3/21コピック+水性ペン+油彩色鉛筆


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