最初はほんとに、ただの暇つぶしだった。
 ルツがシエリをつれて街に買い物に行ってしまったので。


 何もない野原、本を読む気分でもなく雲を眺めていたところに
果物やら木の実やらを抱えたラギが近くの森から戻ってきた。
ちゃんと人数分とってくるのが彼らしい。

「食べませんか?」

 両手の山からひとつ大きな青い果実を差し出される。
 そこで、ふと思いついた。
 即席のゲームが出来る。



 手持ちのもので地面に、ます目をつくる。
 そこに果物と木の実を対になるように並べた。
 ます目を地として、戦場にみたてたよくあるゲーム。
 

 仲間同士での打ち合わせはなしというルールで、
おれとキルト、ラギとウォンの軍に分かれてゲーム開始だ。
 味方と敵の両方の思考を読み取り、先を見越してコマを進めるセンスが必要だ。


 30分もたたないころ、作戦もなしにさんざん場をあらしたウォンが早々に戦線を離脱。
 やけ食いのようにがつがつ果実にかぶりついている。
『だいたい食い物で遊ぶのが間違ってるっての』
 あはは。珍しく常識的な意見だ。

 次いで足をひっぱる事に耐え切れなくなったキルトも場を放棄した。
 背を向けて銃の手入れを始めて完全に拒否の空気。


 どちらの行動も予想してたけどね……。

 面白いのはラギだ。
 弱くはないだろうと思っていたけど、なかなか面白い手を打ってくる。
「じゃあこれでどうでしょう?」
 今までたくさんの人とこのゲームをしてきたけど、あまりお目にかかったことのない戦法を使ってくる。
 慎重なようで大胆な、意表をついてくるようなうち方だ。
 すっかりへそを曲げてしまった年少組みをよそに、おれは久しぶりにゲームを楽しんだ。

 そういえば、1人だけ似たような手を使う人がいたな。
 うん、そうだな、やっぱりよく似ている。
 あの時は全然勝てなくて悔しくて悔しくて、よくおれもあの二人みたいにふてくされてたなあ。


 懐かしいね……。


 決着がつきそうなところでシエリが買い物から戻ってきた。
 熟れそうなほどに慎重に守っていたキングの果実は、あっさりと少女にとられてゲームは終了した。


2006/9/12コピック